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在宅という選択 医療法人社団オリーブ 清澄ケアクリニック

胃がん

①胃がんとは

胃がんは、胃の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因でがん細胞になって無秩序に増殖を繰り返すことで生じます。大きくなるにしたがってがん細胞は胃の壁の中に入り込み、外側にまで侵食し、近くにある大腸や膵臓にも広がっていきます。がんがこのように広がることを浸潤といいます。
がん細胞を顕微鏡で観察した外見の分類では、胃がんのほとんどを腺がんが占めています。細胞の分化度は、大きく分類すると分化型と未分化型に分けられ、一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型はがん細胞の増殖が速いため進行が速い傾向があるといわれています。

②疫学・統計

胃がんの罹患率は40歳代後半以降に高くなります。人口10万人あたりの罹患率は男女とも大きく減ってきていますが、高齢化のために胃がんにかかる人の全体数は横ばいです。がんで亡くなった人の数では、全がんの中で胃がんは2013年時点で男性では2位、女性では3位ですが、以前と比べると、胃がんで亡くなる人の割合は減ってきています。

③治療成績

常がんの治療成績を表すときに使用するものとして5年生存率という言葉があります。
正確にいうと5年相対性生存率といい、がんと診断されていない人と比較して、胃がんと診断された人がどれくらいの割合で生存しているかという数値になります。(よって5年相対生存率100%だからといって、がんと診断された人全員が5年後に100%と生存しているわけではありません)
全国がん(成人病)センター協議会によると下記のようになっております。

病期 5年相対生存率(%)
97.3
65.7
47.2
7.3
全症例 73.1

これは外科手術、放射線治療、化学療法などなんらかの治療を受けた患者さんが対象となっております。
よってそれぞれの病院が出している5年相対生存率は異なります。注意しなければいけないのは仮に5年相対生存率80%の病院と50%の病院があったときに一概にどちらがいいのかは判断できない点です。治療成績がいいようにみえてもそれは病期が低い患者さんだけを対象としている可能性もあるので数値のみを鵜吞みにしないようにしましょう。

④治療方法

ここでは簡潔に書いてありますので詳細はそれぞれの主治医に確認してください。

(1)外科手術

病期や部位によって術式や手術の方法は異なりますが、一般的には胃全部をとるか、上半分または下半分をとるかと考えてください。(もちろん細かく書けば胃の入り口、出口を残すかなどありますので主治医とよく相談してください)
また状況に応じて患者さんがよくイメージされる手術である開腹手術なのか、腹腔鏡というカメラを挿入して行う手術などに分かれます。一般的には腹腔鏡手術のほうが体への負担も少なく、病気や部位、体の状況(合併症や年齢など)にもよりますが、可能な限りは腹腔鏡で行うことが多くなっております。

(2)内視鏡手術

早期でがんの深さがまだ浅いときには内視鏡でその部分だけとってしまうという方法もあります。外科手術に比較してほぼ体の負担はありません。ただし実際に大丈夫かどうかは内視鏡手術で取り除いたがんを病理検査でみることで判明するため、内視鏡手術を行った後に追加で外科手術が必要になる場合もあります。

(3)化学療法

いわゆる抗がん剤治療です。術前に抗がん剤を行い目に見えないような小さな転移をターゲットにしたり、大きすぎて切除できないものを小さくして切除する方法がありますがまだ効果は確立されていません。術後に抗がん剤を行う術後補助化学療法はⅡ期Ⅲ期を対象にして行われ5年相対生存率が10%程度改善すると言われております。
その他手術適応がない場合にも化学療法の適応はあり行われます。化学療法には決まったルールがあります。現在日本ではおそらく多くの病院で標準治療を遵守しているためガイドラインに沿った治療がどこでも受けられるでしょう。

治療医の先生があまり言わないことですが化学療法の意味は基本的には少しでも余命を伸ばすことがほとんどです。ただし最近は化学療法で根治する可能性も出てきているようです。今自分がやっている治療が何を目的にしているのか(漫然とがんと闘うだけでなく、その治療をやることでどのようなメリットがあるのか)をよく主治医と相談して治療を行うか考えてください。
よくある例としては抗がん剤には1次化学療法から始まり効果判定や副作用によって2次、3次となっていきます。主治医も患者さんも1次化学療法の時点では根治が狙える可能性や少なくとも年単位で余命が伸びることを期待して行っているかもしれません。そういった目標があるから辛い副作用にも耐えようと思うのです。しかし2次、3次となってくると主治医は症例によっては余命が3か月を5か月にできたらいいなど考えていくようになります。一方で患者さんはまだ根治を考えるので辛い副作用に耐えている…こういったケースは沢山見てきました。その時、その時でよく主治医と相談して治療を決めていくことをおすすめします。

(4)免疫療法

2017年ニボルマブという免疫療法の薬剤が保険適応になりました。それまでは悪性黒色腫や肺がんの一部などに適応となっておりましたが追加承認という形です。
ただし最初から選択できる治療ではなく、また施設も限られているので検討したい方は主治医と相談するようにしてください。
当院としては保険診療外の自費治療における免疫療法は推奨しておりませんので、そういった自費診療のクリニックをご紹介もしておりません。もちろん患者さんが希望して行うことに何ら問題はありませんのでもし不明点などあればいつでもご相談してください。

⑤緩和期に起きうる症状と対応について

(1)通過障害・嘔気

胃は袋のようなもののため完全に通過に障害がでる可能性が高いわけではありません。早期に通過障害が出た場合には腸瘻という胃の先である小腸のところにチューブをいれてそこに直接液体の栄養剤を流し込むことが可能です。(おそらく多くの方が知っているのは胃瘻ですが胃がんの場合は胃よりも先に直接栄養を流し込むイメージです)ただしそのために総合病院での対応が必要になります。
その他として高カロリー輸液という点滴で生活を送る方法があります。
どちらを選択しても体が栄養を受け止めきれなくなってきた時点で徐々に減量していく必要性があります。
上記のような処置を行わないで薬物で対応する方法もあります。
その場合ステロイドやサンドスタチンといった薬剤を調整しつつ、制吐剤を加えますが制吐剤の一部には消化管蠕動を亢進するものもあるため適応を考えつつ薬剤を調整します。

(2)倦怠感・食思不振

どのがんでも出てくる症状です。ステロイドを使用し一時的な改善を認める場合もありますが長期間効果が持続するものでなく副作用もあるため時期や状況をみて調整を考慮します。

(3)痛み

胃がんの痛みは内蔵痛として出ることが多いです。ある種の痛み止めは胃に負担がかかるため使用するにはリスクがあります。一般的にオピオイド(モルヒネなど)をしっかりと調整することで痛みはコントロールできることが多いです。内服薬以外に貼付剤、坐薬、口腔内崩壊錠、注射など病院で使用できるものはすべて在宅でも使用可能です。