乳腺組織から発生するがんを乳がんと呼びます。種類として、乳管から発生したがんを乳管がん、小葉から発生したがんを小葉がんと呼び、乳がんの発生割合では乳管がんが多くみられます。乳腺組織は女性に多くありますが、男性にも存在するため、男性の場合でも乳がんは発生します。乳がんは、しこりとして見つかる前に、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺、胸膜、肝臓、脳など)に転移して見つかることがあります。乳がんの種類や性質によって、広がりやすさ、転移しやすさは、大きく異なります。 2013年の乳がん死亡数は女性約13,000人で、女性ではがん死亡全体の約9%を占めます。女性のがん罹患全体の約20%を占めます。30歳代から増加をはじめ、40歳代後半から50歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します。 通常がんの治療成績を表すときに使用するものとして5年生存率という言葉があります。 これは外科手術、放射線治療、化学療法などなんらかの治療を受けた患者さんが対象となっております。 ここでは簡潔に書いてありますので詳細はそれぞれの主治医に確認してください。 乳がんの部位や範囲によって乳房部分切除(一部)か乳房切除(全部)が選択されます。また脇の下のリンパ節は転移しやすいものの手術後の症状(しびれ、浮腫みなど)が出やすいため状況に応じて手術中にリンパ節を何個か調べてからリンパ節郭清を行うか判断する場合があります。 乳房部分切除術のあと、温存した乳房やリンパ節での再発の危険性を低くするために、放射線治療が行われることが多くなっています。再発した場合に、がんの増殖や骨転移に伴う痛み、脳への転移による神経症状などを改善するために行われることもあります。 いわゆる抗がん剤治療です。術前に抗がん剤を行いしこりを小さくしてから乳房部分切除を行う方法などが一般的に確立されています。早期の乳がんでは、多くの場合、転移・再発を防ぐ目的で、手術後に化学療法を行います。手術後に化学療法を行う目的は、どこかに潜んでいる微小転移を死滅させることです。手術後の化学療法によって、再発率、死亡率が低下することが報告されています。 手術後に、ホルモン受容体のある乳がんかどうか、がんの組織を詳しく調べます。「ホルモン受容体」のある乳がんでは、女性ホルモンががんの増殖に影響しているとされています。内分泌(ホルモン)療法は女性ホルモンの分泌や働きを妨げることによって乳がんの増殖を抑える治療法で、ホルモン受容体のある乳がんであれば効果が期待できます。 がんの増殖に関わっている分子を標的にして、その働きを阻害する薬です。 乳がんそのものの痛みの他に乳がんは骨転移をしやすいため骨の転移に伴う痛みがでることが多いです。骨転移に対しては緩和的放射線治療を行う方法もあります。 どのがんでも出てくる症状です。ステロイドを使用し一時的な改善を認める場合もありますが長期間効果が持続するものでなく副作用もあるため時期や状況をみて調整を考慮します。 乳がんは皮膚から比較的浅いところにあるため浸潤が強い場合に外部にむかって成長してくることがあります。その際に問題になるのは痛みと出血や浸出液と言われるものです。①乳がんとは
②疫学・統計
男性乳がんの罹患率は女性乳がんの1%程度で、女性に比べ5~10歳程度高い年齢層に発症します。③治療成績
正確にいうと5年相対性生存率といい、がんと診断されていない人と比較して、胃がんと診断された人がどれくらいの割合で生存しているかという数値になります。(よって5年相対生存率100%だからといって、がんと診断された人全員が5年後に100%と生存しているわけではありません)
全国がん(成人病)センター協議会によると下記のようになっております。
病期
5年相対生存率(%)
Ⅰ
99.9
Ⅱ
95.4
Ⅲ
80.3
Ⅳ
33.0
全症例
93.0
よってそれぞれの病院が出している5年相対生存率は異なります。注意しなければいけないのは仮に5年相対生存率80%の病院と50%の病院があったときに一概にどちらがいいのかは判断できない点です。治療成績がいいようにみえてもそれは病期が低い患者さんだけを対象としている可能性もあるので数値のみを鵜吞みにしないようにしましょう。
④治療方法
(1)外科手術
(2)放射線治療
放射線を照射する範囲や量は、放射線治療を行う目的、病巣のある場所、病変の広さなどによって選択されます。多くの場合、外来での治療が可能です(3)化学療法
その他手術適応がない場合にも化学療法の適応はあり行われます。化学療法には決まったルールがあります。現在日本ではおそらく多くの病院で標準治療を遵守しているためガイドラインに沿った治療がどこでも受けられるでしょう。
治療医の先生があまり言わないことですが化学療法の意味は基本的には少しでも余命を伸ばすことがほとんどです。ただし最近は化学療法で根治する可能性も出てきているようです。今自分がやっている治療が何を目的にしているのか(漫然とがんと闘うだけでなく、その治療をやることでどのようなメリットがあるのか)をよく主治医と相談して治療を行うか考えてください。
よくある例としては抗がん剤には1次化学療法から始まり効果判定や副作用によって2次、3次となっていきます。主治医も患者さんも1次化学療法の時点では根治が狙える可能性や少なくとも年単位で余命が伸びることを期待して行っているかもしれません。そういった目標があるから辛い副作用にも耐えようと思うのです。しかし2次、3次となってくると主治医は症例によっては余命が3か月を5か月にできたらいいなど考えていくようになります。一方で患者さんはまだ根治を考えるので辛い副作用に耐えている…こういったケースは沢山見てきました。その時、その時でよく主治医と相談して治療を決めていくことをおすすめします。(4)内分泌(ホルモン)療法
治療の目的や使う薬の種類によって治療期間や効果の目安は変わりますが、手術後に行う場合は5年間から10年間の投与が目安となります。(5)分子標的治療薬
分子標的治療薬にはさまざまな薬剤があります。乳がんでは、細胞の表面にあり乳がんの増殖に関わっていると考えられているタンパク質(HER2:ハーツー)の働きを阻害する抗HER2薬が、手術の前後や再発した場合などに、腫瘍の性質に応じて使われています。病理検査でHER2が陽性であることがわかった場合に治療が検討されます。
⑤緩和期に起きうる症状と対応について
(1)痛み
薬剤としてはNSAIDs(ロキソニンなど)とオピオイド(モルヒネなど)を適切に使用することでコントロール可能なことが多いです。内服薬以外に貼付剤、坐薬、口腔内崩壊錠、注射など病院で使用できるものはすべて在宅でも使用可能です。(2)倦怠感・食思不振
(3)浸潤
モーズペーストという方法で固定する方法や亜鉛華でんぷんで固定するなどして少しでも症状を緩和することもあります。